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【2025年版】賃貸不動産の「税務ガイド」|賃貸仲介・管理会社のための消費税・費用区分の基礎知識
2025/11/14

このページでは、不動産会社で勤務する方たちに向けて実務でよく扱う費用の課税関係について、「知っておくべき一般常識としての税法」としてご紹介します。※個別の税務判断は税理士による最終確認が必要です。
監修:RESUS社会保険労務士事務所(社会保険労務士 山田雅人)
1.はじめに|賃貸不動産の税務は「クレーム防止 × 信頼性」に直結する
現場では次のような質問が特に多くなっています。
・礼金・更新料は課税か非課税か
・敷金は返還部分と充当部分でどう違うか
・管理委託料・事務手数料は課税か
・修繕費と資本的支出の違い
・サブリースの消費税
・インボイス制度で契約・請求はどう変わるか
不動産会社が税務判断を行うことはできませんが、一次情報(国税庁資料)にもとづく“一般的な整理” を知っておくことは、誤解・クレームの防止につながり、また、一般的な税務知識を把握しておくことは、オーナーや法人顧客との円滑なコミュニケーションにも役立ちます。
本ガイドでは、2025年時点の確定情報をもとに、賃貸不動産の消費税区分・費用区分をわかりやすく解説します。
2.仲介手数料の消費税(居住用・事業用ともに課税)
仲介手数料は、国税庁の取扱い上、一般に以下の整理となります。
・課税取引(役務提供の対価)
・居住用・事業用ともに課税
・消費税10%
・免税事業者の場合はインボイス発行不可 → 請求書の記載に注意
賃料など非課税取引と混同されることが多く、「家賃は非課税、仲介手数料は課税」という整理がわかりやすく安全です。仲介手数料は、家賃が非課税であっても課税対象となる点に注意が必要です。
3.更新料・礼金・敷金の税務
(ここが最も誤解されやすい領域のため、一次情報ベースで整理しておくと、信頼につながります)
3-1.更新料
■ 居住用物件 → 非課税
・国税庁タックスアンサー No.6201
「居住用建物の貸付に係る権利金、礼金、更新料等は非課税」
■ 事業用物件 → 課税(一般的)
同じ「更新料」でも、用途が変わると課税・非課税が変わる点に注意が必要です。
3-2.礼金
■ 居住用 → 非課税(家賃と同じ非課税取引)
・入居に伴う一時金であっても、居住用建物の貸付に付随する金銭は非課税
・返還義務がない一時金でも同様
■ 事業用 → 課税(一般的)
用途区分による違いを、社内マニュアルとして明文化すると混乱が減ります。礼金・更新料の非課税は居住用の取扱いによるものです。事業用は課税となります。
3-3.敷金
敷金は「預り金かどうか」で区分されます。
■ 返還される預り金部分 → 不課税
・対価性がないため不課税(消費税法基本通達)
■ 原状回復に充当される部分 → 課税(役務提供の対価)
・クリーニング費・補修費が該当
・地域の慣行や契約内容で判断が分かれる場合あり
■ 敷引き慣行のある地域
・実質的な礼金性を有する場合があり、個別判断が必要
・税理士・国税庁資料を確認する旨の注意書きが安全
【混乱しやすい税務用語の解説】課税は消費税がかかる取引、非課税は法律で消費税をかけないと決められた取引、不課税はそもそも消費税の対象外の取引、無課税は性質上消費税がかからないもの、未課税は本来課税だが現時点で課税関係が未確定の状態です。
4.管理委託料・事務手数料の税務(一般に課税)
管理会社が行う業務は、一般に「役務提供」とされ課税取引です。
・管理委託料(巡回、契約、募集、入金管理など)
・更新事務手数料
・解約事務手数料
共益費については次のように整理します。
・実費性の高い部分 → 実費精算として不課税となる場合あり
・管理会社の役務提供に該当 → 課税
また、インボイス制度では管理会社のインボイス登録有無が、オーナーの仕入税額控除に影響するため、契約書の表記を統一しておくことが重要です。
5.サブリースの税務(転貸業としての取扱い)
サブリースは「管理委託」と異なる税務区分になります。
・サブリース料 → 課税取引
・オーナーへの支払 → 事業者間の課税取引
・転貸差益に消費税が関与
・違約金・解約金 → 事実関係によって課税/不課税が分かれる
国税庁の質疑応答事例でも判断が分かれるケースが示されており、「一般的には…ですが、最終判断は税理士に確認されることをおすすめします」という説明方法が安全です。
6.修繕費と資本的支出の区分
※国税庁「所得税基本通達45-1(修繕費と資本的支出)」の一般的考え方に基づきます。
修繕費(費用処理されることが多い)
・原状回復を目的とする
・資産価値を高めない軽微な工事
・クロス貼替、畳交換、部分補修など
資本的支出(資産計上が必要な場合がある)
・価値向上、耐用年数延長
・設備交換、間取り変更、増築など
説明時は必ず「一般的な考え方であり、個別案件は税理士判断」とすることが安全です。
7.インボイス制度と賃貸不動産業務(2025年以降も継続的に要注意)
・課税/非課税の区分(家賃は非課税、駐車場は課税となる場合あり)
・免税事業者オーナーへの説明義務
・仲介会社・管理会社のインボイス登録の有無
・オーナーの仕入税額控除への影響
・契約書・領収書・請求書の表記ゆれ対策
インボイス制度は経過措置が多いため、「最新の国税庁資料で確認する」と注意書きに明記することが不可欠です。
8.FAQ(よくある質問)
Q1.家賃が非課税なのに、礼金や更新料も非課税なのですか?
A.居住用の場合、家賃・礼金・更新料・権利金はすべて「居住用建物の貸付け」に係る対価として非課税です。事業用の場合は課税となることが一般的です。
Q2.敷金の返還部分に消費税はかかりますか?
A.返還される預り金部分は不課税です。原状回復に充当される部分は課税の扱いが一般的です。
Q3.退去時の修繕費は課税ですか?
A.役務提供に該当するため課税が原則ですが、負担区分や工事内容により異なる場合があります。
Q4.更新料はなぜ非課税なのですか?
A.国税庁の非課税取引の規定で、居住用の貸付に付随する金銭として非課税と整理されています。
Q5.管理委託料はすべて課税ですか?
A.業務対価となる部分は課税ですが、実費性の高い部分(立替清算)は不課税となる場合があります。
Q6.礼金にインボイスは必要ですか?
A.居住用の礼金は非課税のため、インボイスの対象外です。
事業用の場合は課税となり、インボイスの要否が生じます。
Q7.オーナーから「これは経費?」と聞かれた場合、どう答えれば安全ですか?
A.一般的な考え方は説明しつつ、最終判断は税理士確認を前提とする言い方が最も安全です。
Q8.サブリースの解約金は課税ですか?
A.事実関係により取扱いが異なります。税理士判断が必要です。
Q9.敷金は“非課税”ではなく“不課税”と説明されるのはなぜですか?
A.敷金は預り金であり、対価性のある取引ではないため「消費税の対象外(不課税)」と整理されています。一方、礼金・更新料は「居住用建物の貸付け」という取引の一部であるため「非課税取引」として扱われます。
Q10.個人オーナーが「駐車場代は非課税だ」と主張して譲りません。どう対応すればよいですか?
A.駐車場は、区画がある・舗装されている・白線が引かれているなど「駐車場としての設備や管理」がある場合、国税庁の取扱いでは一般に“課税”とされています。オーナーの意向で非課税に変更できるものではありません。非課税扱いにしてしまうと、後から税務署に「本来は課税」と判断された場合、過去分の消費税や加算税をオーナーが負担する可能性があります。そのため管理会社としても誤った形で非課税請求はできません。どうしても非課税を希望される場合は、必ず税理士または税務署に確認いただくようご案内し、当社としては国税庁の一般的な取扱いに従い「課税」で統一している旨を説明するのが安全です。
▶不動産業者必見!駐車場貸付と仲介手数料にかかる消費税の基本と注意点【2025年最新版】
Q11.駐車場の契約書に税区分が書かれていないのに、仲介手数料に消費税をかけるのは二重課税だと言われました。どう説明すればよいですか?
A.駐車場代が税込(内税)かどうかは、仲介手数料の課税とは一切関係ありません。消費税法上、「駐車場を貸す行為(賃貸借)」と「仲介サービスを提供する行為」はまったく別の取引として扱われます。駐車場代に内税で消費税が含まれていても、仲介手数料は“役務提供の対価”に該当するため、課税(外税)が必要です。これは国税庁の一般的な取扱いであり、オーナーや借主の意向で非課税とすることはできません。ご不安があるお客様へは、税理士または税務署へ確認いただくようご案内するのが安全です。
Q12.税区分の記載が無い駐車場代 11,000円を税込(内税)とみなして仲介手数料を計算するケースがありますが、仲介手数料に消費税を課して請求できないのでしょうか?
A.仲介手数料には課税して請求できます。駐車場代 11,000円を「本体 10,000円+消費税 1,000円」の“税込(内税)”として扱うことは、不動産管理の実務上よくある運用ですが、これは 「オーナー ↔ 借主」の賃貸借契約における価格設定 に関する話です。一方で、仲介手数料は「仲介会社 ↔ 借主」に対する役務提供の対価」として、消費税法上はまったく別の取引として扱われます。そのため、駐車場代に消費税が含まれているかどうかに関係なく、仲介手数料には 別途消費税(外税)を課して請求する必要があります。これは国税庁の一般的な整理であり、駐車場代が税込表示であっても、仲介手数料の課税関係が変わることはありません。ご不安な場合は、顧問税理士または税務署で確認いただくよう案内すると安全です。
Q13.駐車場賃料が「11,000円(税込)」と書かれている場合、仲介手数料は税込11,000円ですか?それとも税込12,100円を請求してもよいのですか?
A.税込12,100円の請求が正しい取扱いです。宅建業法上の「賃料」は借主が実際に支払う“税込額”を指すため、11,000円(税込)を基準に仲介手数料を算出します。また、仲介手数料は「仲介サービスの対価」であり、駐車場の賃貸借とは別取引として消費税法上必ず課税されます。したがって、
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基準賃料(11,000円) × 手数料上限(1か月分)= 11,000円(税抜)
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11,000円 + 消費税10%= 12,100円(税込)
となり、税込12,100円の請求は適法であり、二重課税にも該当しません。ご不安な場合は税理士または税務署で確認いただける旨を案内すると安全です。
法令注記(コンプライアンス対応)
・本ページは国税庁の公開資料に基づく「一般的な整理」をまとめたものです。
・個別の税務判断は、必ず税理士・国税庁資料で最終確認してください。
・居住用/事業用で課税区分が大きく異なるため、用途確認が必須です。
・2025年時点の確定情報のみを扱っています。
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