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不動産業者が知っておくべき駐車場と仲介手数料の消費税

2019/11/13

(最終更新日:2022/4/1)

駐車場と消費税の課税関係は複雑です。インターネット上にも多くの情報が出回っていますが間違いも多く、税理士や弁護士ですら扱いに悩むことがあるほどです。不動産会社で働いている方が日ごろ扱う駐車場の仲介手数料まで考慮すると何が何だかわからない人も多いのではないでしょうか。ただでさえ苦手な消費税法ですが、不動産業者であれば押さえておくべき駐車場と消費税の基礎を理解しておきましょう。

土地の貸付は非課税、駐車場の貸付は課税

土地の貸付が非課税になるのは、土地を利用しても価値は減少しないからです。消費されないものは原則として消費税の対象となりません。駐車場、野球場やプール、テニスコートなどの貸付に課税されるのは、価値の減少する施設の利用がメインで、土地の借入に付随しているものに過ぎないとみなされるからです。

消費税が課税される駐車場取引

✅貸付期間(契約期間)が1か月に満たない取引

✅砂利やアスファルト舗装で土地を整備又はフェンス、区画、建物の設置等をして利用させる場合

✅車両の管理を行っている場合(標識などの設置や管理者の看板の設置など)

✅運動施設など施設の利用に伴い土地が使用される場合

上記のいずれかにでも該当する場合には消費税の対象となる課税取引として扱うこととされています。

消費税が課税されない駐車場取引(要件の例外)

☑住居の家賃に駐車場代が含まれている取引

☑共同住宅などで入居者全員に駐車場がある場合

☑駐車場の利用に関わらず同じ家賃が適用されている場合

☑同一の敷地内にあること

一戸建て住宅に係る駐車場の他、共同住宅の契約時でもこれらすべての条件を満たす駐車場の契約には、全体が住宅の貸し付けと扱い非課税が適用されます。

1か月以上の期間で更地(いわゆる青空駐車場)を借りて自動車の駐車場として利用しても非課税となりますが、要件を満たした場合には消費税が課税されることになりますのでなんだか解せない気持ちもわかります。但し、青空駐車場であっても実態として区画が確認できるような標識(プレート)などの設置があれば非課税ではなく課税扱いと判定されることもあるため、非課税取引として申告する場合には十分注意が必要です。

駐車場契約の一時金は?

駐車場を契約するときには初期費用がかかることが多いと思います。例えば、保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、車庫証明発行手数料などです。

これらは一つ一つの項目において課税関係を理解しておく必要があります。

まずは保証金(敷金)のように、解約時に返還される金銭は単なるお金の貸し借りとされるため、【不課税】として扱います。不課税とは、そもそも消費税の対象とならない『消費税法の枠外』の取引を言います。一方で、【非課税】は、消費税法の枠内にある取引であるが、社会政策的配慮で課税対象としない取引を言います。課税・非課税・不課税と言われるとほとんどの人が尻込みする苦手科目ですが、不動産業者であれば理解しておかなければ指摘されて恥をかきます。

なお、駐車場契約時に礼金がある場合は消費税がかかります。住居の礼金は非課税と扱われますが、駐車場契約となると礼金には消費税がかかるため混乱します。これは簡単で、礼金は賃料の前払い的性質を備えていると税法では扱われているためで、住居の家賃は非課税、駐車場の賃料は課税で考えればすっきりします。更新料がもしもあった場合も同様です。駐車場の契約時に礼金を取るところは最近稀ですが、礼金の消費税を説明なしに請求したところ客のクレームになった話があります。一般の人たちでは理解できないかもしれませんが、法人客でも同様に苦情を言われたケースがありましたので、消費税の課税関係を説明できるようにしておかなければなりません。初期費用でも仲介手数料や車庫証明発行手数料に消費税がかかる課税取引なのは皆さまご存じの通りです。

免税業者の駐車場は非課税?

消費税は、その課税期間に係る基準期間における「課税売上高」が1,000万円以下の事業者など、納税義務が免除される特例があることはご存じのことと思います。それら事業者をまとめて「免税事業者」と呼びますが、免税事業者だからといって課税取引が非課税取引になることはありません。専門家以外の会社員でほとんど理解できる人はいませんが、免税事業者は納税義務が免除されているだけで、消費税が課税される取引は同じです。したがって、「免税事業者だから消費税を請求しづらい」、「免税事業者なのに消費税を請求するのはおかしい」、「免税事業者相手に消費税を支払う義務は無い」というのはよくある誤った理解です。なぜなら、免税事業者であっても仕入や事業活動で消費税を支払っており、自らが請求するときだけ消費税を請求してはならないのは道理が通りません。免税事業者は、『消費税を納税する義務は無いが、消費税分を請求する権利はある』と解釈するとすっきりします。

消費税の差額が懐に入る「益税」問題もありますが、消費税率引き上げと軽減税率制度導入に伴い、2023年10月から「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」の段階的導入が予定されています。課税事業者はインボイス以外では仕入税額控除を受けることができなくなるなど、免税事業者との取引にデメリットあるため法人取引(BtoB)では免税事業者NGとなるかもしれません。現在は免税事業者か課税事業者かの区分は外見的にはわかりませんが、2021年からは「適格請求書発行事業者登録制度」によってインターネット上で免税課税を閲覧できることになります。

駐車場と駐車場手数料と借地借家法の関係

「駐車場契約は借地借家法が適用されない。」この話は不動産会社で勤務していれば一度は耳にしたことがあるはずです。仲介手数料との関係で考えてみましょう。

そもそも借地借家法は借主保護を目的とした民法の特別法であることはよく知られています。借地という言葉があるからには駐車場も借地借家法の適用があると思うかもしれませんが、借地借家法上の借地とは、「建物所有目的」の土地賃貸借(借地借家法法2条1号)とされており、一台ごとの自動車を駐車することを目的とした土地の契約は借地借家法の適用はありません。そして、借地借家法の適用が無いということは、宅地建物取引業法(「宅建業法」)の適用もありません。宅建業法の適用が無いのであれば取引の仲介に不動産の免許や重要事項説明も不要で、理論的に駐車場仲介手数料は上限無くいくら請求しても借主が承諾すれば法に抵触しないとも言えますが、実務上は賃料の一か月としているところがほとんどです。

さて、例えば税込み10,000円の駐車場の仲介手数料に別途消費税がかかることに「二重課税で違法では?」と疑問を持つ方も多いと思います。先の例で行くと、駐車場に対する仲介手数料は上限の法的な定めは無いため自由に設定することができ、双方で合意した仲介手数料額に対して消費税(現行10%)を加算することに何ら問題はありません。但し、実務上は駐車場の仲介手数料は消費税を含めて駐車場代と同額としているところが多いようです。

やっかいなパターン?

時々、年配の駐車場オーナーとの取引の場合に、課税取引となる駐車場契約にもかかわらず、「消費税無し(表記無し)」や、消費税を「非課税」と表記して契約書類や請求書を作成される方がいます。間違っていることが明らかな場合でも頑として譲らないことがあります。仲介業者からすれば訂正してほしいところですが、仲介業者は訂正を強制する立場になく取引で困ることがあります。しかし、消費税は負担者と納付義務者が異なる「間接税」であり、納付義務者は事業者です。既に税率は10%に改定されましたが、今後消費税率が改訂された場合に利用者から増税分を請求するのが難しくなる旨お知らせしたうえで、請求された額を支払いすればよいだけです。

おわりに

消費税を含めた取引の課税関係は一般の会社員では学ぶ機会が少なく、また難しいというイメージで積極的に学ぼうとする人は極めて稀ですが、税や社会保険法など、社会全体で広く適用されるルールを学んでおくことは生涯利用できる知識になります。経営者やコンサルタントが税務に無知では誰からも信頼を得ることができないため嫌でも学ばなければなりませんが、一般会社員でも税務に理解が高ければ希少価値の高い人材として重宝されます。少なくとも、日ごろから多くの取引に携わる不動産業者の従業員であれば、税アレルギーを克服して消費税の取扱は最低限を理解しておく必要があります。

 

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【記事監修】RESUS社会保険労務士事務所/山田雅人(宅地建物取引士・社会保険労務士)
大企業・上場企業を中心に10年にわたり全国500社以上の人事担当と面談、100社以上の社宅制度導入・見直し・廃止に携わった経験を活かし、不動産仲介業者に向けた事務代行サービス、不動産業専門に特化した社労士として人材不足の解消や働き方改革を支援しています。

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