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借り上げ社宅の家賃付帯サービスは所得税・社会保険料を徴収する?

2019/10/16

借上げ社宅の家賃付帯サービスと課税・社会保険関係

家具付き賃貸マンションは欧米では広く一般的ですが、最近は日本でも家具付き物件が増加しているといいます。賃貸マンションやアパートの契約時には様々なサービスが付帯された物件が増え、借りる時には賃料や立地だけでなく、その物件独自の魅力的なサービスで選ぶ楽しみが増えました。

このような家具付き賃貸マンションのように、住まいに必要となる諸経費が「賃料に含まれる」場合、会社が借上げて従業員に貸与する「借上げ社宅」の場合にはどのように扱うのが適正か質問を受けることがあります。細かい運用ですが誤った解釈や運用を行っている会社も多く、大企業であっても税務所から指摘され追徴されたケースがあるため、基本的なルールは知っておかなければなりません。

駐車場が賃料に含まれている場合

駐車場の借賃料は税法上も社会保険法上も社宅と同等しては扱われず、住居の貸与と同じ計算を適用することはできません(基本通達36-40、36-45)。よって、会社が社宅に付随する駐車場料を負担する場合にはその部分を給与として課税する必要があります。賃料に含まれている場合には社内規程によって駐車場代相当分を定めたり、不動産会社へ近隣相場の聞き取り調査に協力してもらって算出する方法をとっている会社もありますが事実上正確に按分計算することは困難であるため、社宅に駐車場込み(無料)の場合には便宜上課税・社会保険料の徴収を行っていない会社も多くあります。

光熱費(水道代・電気代)が含まれている場合

ガス代が賃料に含まれているケースは見たことがありませんが、水道引き込みの関係などによって水道代が定額であったり、家賃に含まれているケースも多くあります。本来水道代や電気代などの光熱費は個人が全額を負担すべき性質のものとされ、会社がその負担を行った場合には個人の給与所得として課税、社会保険法上も標準報酬月額に含まれるものと扱い徴収する必要があります。月々の支払分が明確でなく、賃料に内包されており金額が明確でない場合には合理的な方法によって按分計算を行い、適切な額を負担させる必要があります。

フリーレント(一定期間の賃料減額)が付帯されている場合

フリーレントは一定期間賃料を減額したり無料にしたりするサービスで、居住用・事業用問わずに見かけることが多くなりました。手持ちに余裕がない借主や初期費用の負担を軽減する代わりに、一定の契約期間に縛りをもうけるなど、長く住んでもらうために工夫されたサービスですが、借上げ社宅がフリーレント期間中であれば入居者も自己負担しなくて問題無いでしょうか。答えは、「NO」です。家主に支払う家賃と税法・社会保険法上の賃料相当額は関連しないため、社宅がフリーレント期間中であっても入居者に一定額を自己負担させなければ課税・社会保険料徴収義務が発生します。入居者にすれば納得いかない気もしますが、やむを得ません。

家具(家電)が含まれている場合

住居と一体となっているような備え付けの家具は家賃と区分せず扱って問題ありませんが、入居者誘引のため別途後から備え付けられたような家具(家電)付き物件であれば、本来は従業員・役員の負担で設置する性質のものとなりますのでその価格の部分は案分して給与扱いする必要があります。

なお、転勤者や単身赴任者に対する負担の軽減として、リースした家具等を無償で貸与している会社もありますが、自社で購入した家具等を貸与する場合には定額法によって計算した減価償却費相当額に維持管理費用相当額を加算し見積もった額を経済的利益として給与課税されます。リースの場合にはリース料相当額が経済的利益として扱われ、無償貸与する場合にはその経済的利益に対して課税関係・社会保険料が発生します。(根拠法令:所得税法第36条第1項、第2項

雇用保険・労災保険を定める徴収法上は家具等は社宅と同様に、均衡手当を支給しない場合には賃金には含まれないため無視してかまいませんが、社会保険料の現物給与となる範囲はその他の報酬として扱われ「時価」を通貨に換算し、金銭と合算したうえで標準報酬月額の決定を行うこととされていることから、労使協定がある場合にはその額、無い場合には税法上の処理と同等で扱います。社会保険料の現物給与は数年前までほとんど調査に及ぶことがありませんでしたが、最近は調査されることがあるため報酬から除外する際には自己責任で判断しましょう。

インターネット代(無料Wi-Fi)が含まれている場合

最近はダイワリビングなど大手ハウスメーカーの賃貸アパートでもインターネットの無料サービスを始めています。インターネットは業務遂行上の必要経費と認められないこともありませんが、通常はNHKの受信料や町会費同様に自己負担と扱うのが一般的です。よって、賃料に含まれている場合には規程もしくは実費相当額を案分して経済的利益・現物給与価格を算出するのが適切な処理といえますが、実務上困難なため給与課税処理せずに扱っているところがほとんどです。

おわりに

社宅契約に付随して賃料に含まれているものは所得税法上も社会保険法上も、「実務上課税するのが困難であるため課税していない」だけであり、過大なものや恒常的なものとなると指摘される恐れがあります。光熱費など生活に必要な費用が「家賃に含む(無料)」となっている場合には、基本を踏まえたうえで例外扱いとするような指針など、簡単でもよいので書面によるルール作りを行い、監督官庁に指摘された際の説明や反論の根拠を備えておくことが必要です。

 

【記事監修】RESUS社会保険労務士事務所/山田雅人(宅地建物取引士・社会保険労務士)
大企業・上場企業を中心に10年にわたり全国500社以上の人事担当と面談、100社以上の社宅制度導入・見直し・廃止に携わった経験を活かし、不動産に詳しい社労士として中小企業の福利厚生制度設計を支援しています。

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