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借上げ社宅規程でペット飼育を禁止する?認める?

2019/10/30

(最終更新日:2022/4/1)

借上げ社宅でペットと暮らす癒しの生活

ひと昔前までは会社の寮や社宅で犬や猫のペットを飼育したいといえば、門前払いで却下するのが当たり前でしたが、最近はそうでもないようです。

ペットショップやペット関連の事業を行っている会社でなくとも、借上げ社宅の規則上で許可する会社も増えてきています。これだけペットの飼育者が増えれば当然とも言えますが、新型コロナによる在宅時間も増えペット飼育人気はますます高まっており、求職者へのアプローチとして、「寮でペットが飼える」ことをアピールする会社もあります。

癒しの代名詞である犬や猫などペットと暮らしたいニーズに合わせて、分譲マンションではペット共生マンションが多く売り出しされ人気を博しており、賃貸マンションでもペット飼育可の物件は増加を続けています。動物カフェやペットのレンタル、ペット付きマンションなどユニークな民間サービスも話題性が高く、SNSで犬や猫の写真を上げれば「いいね!」の連発です。「うちは社宅だからペットは飼えない」時代も変わり始め、会社の社宅規程上での取り扱いについて検討している会社も既に多いと思いますが、規程上の扱いについて注意点を確認しましょう。

社宅規程と法律関係

社宅規程は会社が従業員への付加価値提供を目的とした福利厚生制度のため、税法・社会保険法等における現物給与の扱いさえ注意しておけば、制度の内容については法律上の規制はありません。よって、ペット飼育を禁止するのも認めるのも会社の自由です。当然認める場合においてもワシントン条約や危険動物など、個別に制限していくときりが無いため、どの範囲までなら規程で許可するかどうかもよく検討しておかなければなりません。現状はほとんどの企業の社宅規程においてはペットに関して触れておらず、飼育については実務上で柔軟に対応していると思われますが、規程上に盛り込むことも検討する時期かもしれません。

ペット不可物件でペットを飼育していた問題

会社の規程上でも禁止しているにも関わらず、会社にも家主にも黙ってペットを飼育しているケースは多くあります。発覚して管理会社から退去を命じられた際には飼育をあきらめるか、退去することはやむを得ませんが、外部から借りている借上げ社宅であれば原状回復費用や消臭費用のほか、違約金の請求が高額になるケースも想定されます。会社名義で契約していれば入居者の違反行為は会社へ責任追求されます。会社のルールは常識で決定するものではなく規程で決定するものであるため、社宅入居申請時でも飼育の有無や社宅利用誓約書等で飼育の扱いを盛り込んでおく必要があります。従業員はあくまでも利用者であり貸主と直接の契約関係に無いため、何ら規則が無いままであれば賃貸契約違反は入居者には及ばず、会社規程上の取り決めが無かったと開き直られれば請求された費用の回収も困難になります。

単身赴任者と家族帯同転勤の問題

夫婦二人とペットで暮らすDINKSや、単身ペットと暮らすライフスタイルは既に一般的で、ペットと離れて暮らすことは大きなストレスとなります。家族帯同で転勤する場合も、ペットを置いていくことは考えられないことで、会社かペットかの選択肢はあまりにも酷です。嫌なら個人契約でペット可物件に住めばよいとの意見も理解できますが、家族を犠牲にしてまで会社のために生きることが馴染まないワークライフバランスが求められる現代においては、人材の引き留め、モチベーションを高めて職務に打ち込ませるための施策としてどちらが効果的かを考えれば自明です。

社宅規程のペットを許可する項目例

ペットの飼育を許可するならば、やはり規程でペット飼育に関する定めを規程しておくことが安全な運用といえます。

《就業規則記載例》
第○条(社宅におけるペットの飼育)
借上げ社宅の貸主が許可した場合に限り、許可した範囲のペット飼育を許可する。
1.借上げ社宅においてペット飼育を希望する者は事前に指定された申請を行い、許可を得なければならない。
2.ペット飼育に拠ることを問わず、借上げ社宅の通常損耗を超える原状回復費用について請求があった場合はその全額を入居者が負担する。
3.ペット飼育を理由とする借上げ社宅契約時の条件変更等については返金が明らかな費用(敷金等)を除きその差額は入居者が負担する。
4.借上げ社宅の貸主が定める飼育規約等に違反したことにより退去を命じられた際の退去費用は全額入居者負担とし、会社が立て替えて支払った場合は翌月分の賃金等から同額を控除する。
5.借上げ社宅においてペットを飼育する社宅利用者は善良なる管理者の注意をもって住環境の保全と衛生、円満な隣人関係を営まなければならない。

深刻な空室問題

賃貸マンション市場では都市部であっても深刻な空室率となっているマンションが多くあり、現状はペット飼育可マンションの比率は15%程度と言われていますが、空室対策や家賃維持にはペット飼育を認めることが効果的で今後も増加していくはずです。一般の住居においてもペット需要が広がる中で社宅だけ禁止していることは理解を得難い時代となり、優秀な人材確保の面からも認める方向へ進むのは自然なことです。20年前は犬や猫はただのペットでしたが、現代はペットも家族という意識が広まっています。単身者であっても社宅でペットを飼育したいというニーズはもともと多くありましたが、職場にペットや家族を連れてくるようなワークライフインテグレーション(仕事とプライべートの融合)といった新しい働き方も注目される中、企業の人事戦略として検討することも必要な時代かもしれません。

まとめ

ペット人気や需要を考えると、現代の経営において社宅でのペットを禁止することの合理性は低くなりつつあります。もちろん社宅制度でペットの飼育を禁止することは会社の自由ですが、社長が犬嫌いなどは理由にならず、ペットの病気による欠勤や遅刻などが増えるリスクで禁止することは従業員の私生活の自由を制限することにもなり、単身者だから世話ができないという理由も多くの単身者が犬や猫と暮らしている今、理解を得るには無理があります。社会もペット共生に寛容となりつつある今、優秀な人材確保やモチベーション維持を考えれば、禁止するよりも社宅でペット飼育を認めるメリットの方が大きいかもしれません。

 

社宅業務外務委託アドバイザリー顧問サービス

 

【記事監修】RESUS社会保険労務士事務所/山田雅人(宅地建物取引士・社会保険労務士)
大企業・上場企業を中心に10年以上全国延べ500社以上の人事担当と面談、100社以上の社宅制度導入・見直し・廃止に携わった経験を活かし、不動産専門に特化した社労士として企業の福利厚生制度導入、働き方改革を支援しています。

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