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【新米人事必見】社宅業務担当を任されたら知っておくこと

2019/08/08

社宅業務の担当になったら知っておくこと

社宅代行業者へ委託せず、自社で社宅業務を行っていると様々な問題が発生します。異動による担当変更で引き継ぎが十分でなかった場合や突然のベテラン担当者の退職など、予期せぬ社内事情で突然社宅業務を担当することになったらどうすればよいのでしょうか。件数と人員のバランスが取れていない会社も多く、また異動の時期は一時期に集中するため業務の応対が深夜に及ぶこともあります。負担が重い場合は業務のアウトソーシングを検討しますが、会社の承認が下りない場合は自力で攻略していく必要があります。社宅業務の基本を理解して難題を乗り越えれば、ニーズの高い経験値を持った人材として重宝されるかもしれません。まずは押さえておくべき面倒な業務の基礎を押さえておきましょう。

【面倒な借り上げ社宅業務5選】

①支払調書作成業務

②個別契約業務

③退去精算業務

④給与控除額計算業務

⑤業者手配業務

①支払調書

年に一度の支払調書(法定調書)作成は社宅業務で最大の負担と言われています。しかし何のための作業かよく考えてみましょう。支払調書は『税務所の反面調査のための作業』です。わざわざ税務署のため何十時間もの人員(人件費)を割き、顧客に納品するほどの細部にこだわった完全性を高める作業でしょうか。未提出は『1年以下の懲役、または50万円以下の罰金』が科されるとされていますが、実際に罰を下された話を聞いたことはありません。企業であれば提出義務は無視できませんが、こだわりすぎても価値は無いことを理解しておきましょう。

《不動産の使用料等の支払調書》

1月1日から12月31日までに支払った不動産(土地・建物)の使用料を翌年1月31日までに税務署への提出が義務づけられています。

✅貸主(個人)に支払った15万円を超える借賃料(地代、家賃など)

✅貸主(法人)に支払った15万円を超える権利金、礼金、更新料

貸主への送付は義務付けられていませんが、日ごろから記帳していないような個人家主の場合は確定申告のために支払調書を求められることがあります。

②個別契約業務

個別契約手続きは経験がなければ扱うことが難しいといえます。なぜなら、不動産契約は正しさの問題ではなく、地域商習慣、不動産契約の特性、自社の規模、その他さまざまな要因があり、例えば『礼金』や『短期解約違約金』に納得できないならそのエリアでほとんどの物件は契約できなくなります。不動産契約の特性を理解し、過大な支払い、リスクを調査し、その他は柔軟に対応しなければ手続きは滞るばかりで進みません。

1.契約書のチェック箇所

(1)反社会的勢力排除の記載はあるか

(2)賃料は双方協議のうえ改定することとされているか

(3)連帯保証人は必須とされていないか(※小規模事業の場合はやむをえない場合があります)

(4)原状回復費用の特約事項は一般的な範囲内か

(5)短期解約違約金は一般的な範囲内か

(6)解約・更新手続きは1か月前までか

(7)貸主からの解約は6か月以上前に設定されているか

(8)火災保険は貸主指定に限定されていないか

(9)賃料振り込み期限は『翌月分を前月末』とされているか

(10)特約事項等で特別に不利な条項の記載はないか

社宅担当者であればこれらすべてが社内ルールをクリアしているか確認する必要がありますが、別途覚書を作成し、入居申込時に貸主の承諾を取り付けるなどすれば業務が軽減されます。

③退去精算業務

社宅業務で最も頭を悩ませるのが退去精算業務です。一般的に、会社都合による退去の場合でも約定を除いた『故意・過失による原状回復費用』は個人負担としている企業が多く、本人の承諾に十分な説明が求められるため、一定の経験がなければ会社にも本人にも妥当性の承諾を取り付けることが難しくなり板挟みに苦しみます。通常はハウスクリーニング費用で2,000円×平米、クロスは3,000円×㎡、鍵交換は30,000円くらいまでが相場の上限といえますが、物件の特殊性によっては上限を大きく超えることもあり、『契約時に確認しておく事項』に該当します。前任者のミスや制度の甘さのツケが回ってきているとはいえ、過去の会社の姿勢を批判することは会社員ならできません。請求された場合は物件管理担当者との折衝が必要なうえ、場合によっては法務部、弁護士案件行きともなりかねないため、相当な力量が求められます。

さらに、退職者に対する原状回復費用は実務上請求が困難となることがあり、本人が納得しないまま最後の給与から控除などしてしまうと賃金全額払い違反(労基法第24条)に抵触し、労働基準監督署の指導や未払い賃金の紛争にも発展する可能性があります。そのため退去精算業務の外部化を目的として代行会社へアウトソーシングする企業もあります。また、自己都合退職時の短期解約違約金を本人負担としている会社も多くありますが、今度は賠償予定の禁止(労基法大16条)の関係から転勤や単身赴任など業務関連度合が強いほど法律違反が疑われることになり、会社が定めたルールに誤りがあったり、認識が不足している場合の実務処理は担当レベルでは板挟みになり苦悶します。

④給与控除額計算業務

通常借り上げ社宅の場合、本人負担額を計算して給与から控除します。

月々の控除額は会社独自の計算方法があるはずですのでデータ作成に負担は考えられませんが、転勤等による会社都合退去時のカラ家賃部分の負担は社宅規定等にルールを盛り込み、トラブルとならないようにしなければなりません。

また、会社契約住居の賃料部分が経費として認められるためには本人が一定額を負担(賃貸料相当額の1/2以上)していることが条件となり、税法上と社会保険法上で扱いが異なります。過少な負担をさせる親切な企業も多くみられますが、税務調査だけでなく年金事務所等の行政調査になった場合には2年遡っての社会保険料遡及など、大きなリスクを孕んでいるため本人負担額は十分な額をしっかりと負担させる必要があります。

【賃金全額払いの原則(労基法24条)の例外】

①法令に別段の定めがある場合(所得税の源泉徴収、社会保険料、雇用保険料、住民税の控除)

②社員の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合

※労使協定の労働基準監督署への届出は義務付けられていませんが、協定がないまま賃金控除を行うと法令違反として30万円以下の罰金が科されます。また、労使協定があればなんでも控除してよいというわけではありません(社宅・寮費は協定による控除が認められます)。

2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)より同一労働同一賃金へ向けた法改正が施行されます。正社員と非正社員(アルバイト・有期雇用労働者など)の住宅手当等に格差がある場合は違法と判定される可能性が高く、損害賠償請求の対象ともなりますのでこのタイミングでしっかり確認しておく必要があります。

⑤業者手配業務

転勤の実施は自社だけでは完結しません。引越し業者や不動産業者など、自社以外の専門業者の協力を仰ぎながら赴任手続きを支援する必要があります。個人にすべてを任せて会社は関与せず、支度金の支給で清算処理している企業も多くありますが、一律に支給されるものや通常必要とされる範囲を超えて支給されるものについては給与所得として課税され、また社会保険料(賞与扱い)への影響も懸念されます。また、個人で手配した業者の手落ちによってトラブルが発生し、転勤の手続きが滞り、業務にマイナスの影響があった場合、だれに責任を負わせるでしょうか。人事部としては異動社員に対するサポートを行う必要があり、事業所近隣で法人契約を扱える不動産業者や引越し業者と提携するなどしておくことがベストな方法です。

 

社宅業務外部委託アドバイザリー顧問サービス

 

【記事監修】RESUS社会保険労務士事務所/山田雅人(宅地建物取引士・社会保険労務士)
大企業・上場企業を中心に10年にわたり全国500社以上の人事担当と面談、100社以上の社宅制度導入・見直し・廃止に携わった経験を活かし、不動産に詳しい社労士として中小企業の福利厚生制度設計を支援しています。

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当社では借上げ社宅制度の導入のほか、制度見直し、業務アウトソーシングなど、福利厚生制度全般に係るコンサルティング業務を専門で行っております。お困りの場合はお気軽にお問い合わせください。

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