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社宅業務の外部委託を検討するとき(社宅代行会社の導入比較)

2019/11/05

20年前までは大企業の特権であった社宅制度ですが、ここ10年間は社有社宅制度に代わって借上げ社宅制度が主流となり、借上げ社宅制度の導入メリットの高さから中小企業や零細企業にまで広く普及しています。

しかし、会社の税法、社会保険法上のメリットは大きいものの、会社名義での契約による『社内の運用コスト』は一定規模になると負担を感じるようになります。しかし、社宅の運用は労務知識と不動産、税法の最低限の知識を備えていなければ実務対応できず、こと人件費の高騰と、人材不足によって会社の成長、社宅利用者の増加によってアウトソーシングを検討する時期は必ず訪れます。

社宅代行会社の委託を検討する際の『委託するかしないか』の判断基準について、自社運営コストと外部委託コストの面から比較していきましょう。

✅人件費の比較

自社で社宅業務を行う際には様々な手続きが発生しています。工程をピックアックして年間の対応時間を算出し、社宅代行会社の委託コストとシミュレーションしてみましょう。

【新規契約時(個別)】

新規契約時作業 自社対応時間(分) 社宅代行委託後(分)
1 社宅利用者への連絡(転勤規程伝達等) 15 15
2 社宅入居申請処理 5 5
3 物件紹介依頼 15 0
4 物件情報の収集・チェック 30 0
5 物件の下見 0 0
6 貸主への契約申し込み 10 0
7 契約条件精査・交渉 20 0
8 社宅契約稟議書類申請処理 15 10
9 契約金支払 15 0
10 契約書類原本押印処理 15 0
11 火災保険手続き 5 0
12 社宅データ入力(物件・契約情報) 10 0
13 給与データ入力 10 0
14 契約書類保管 10 0

【契約更新時】

契約更新時作業 自社対応時間(分) 社宅代行委託後(分)
1 更新期日管理 5 0
2 更新条件確認・交渉 10 5
3 更新契約稟議申請処理 15 15
4 貸主への更新契約申し込み 10 0
5 更新料支払 15 0
6 更新契約書類原本押印処理 15 0
7 更新契約書類保管 10 0
8 社宅データ更新 10 0
9 火災保険更新手続き 10 0

【解約時】

社宅解約時作業 自社対応時間(分) 社宅代行委託後(分)
1 社宅退去申請処理 15 15
2 貸主への解約申し込み 10 5
3 明け渡し手続き方法の確認 10 0
4 原状回復費の精査・交渉 15 0
5 故意過失分の入居者の承諾 10 0
6 原状回復費用の支払 10 0
7 給与データ変更 10 10
8 敷金回収 15 0
9 火災保険解約手続き 10 0

【月次固定業務】

月次作業 自社対応時間(分) 社宅代行委託後(分)
1 家賃等データ作成 15 0
2 家賃等送金 5 0

【その他作業】

その他作業 自社対応時間(分) 社宅代行委託後(分)
1 苦情・問い合わせ対応 10 0
2 不動産賃貸料の法定調書(支払調書) 10 0
3 敷金残高管理(資産管理) 10 0
4 引越し業者手配業務 10 0
5 引越し見積書チェック・選定業務 15 0

こうして書き出しして分単位で算出すると、意外にも多くの時間を使っていることがわかります。日々の業務を行っていると気づきにくく、また他部署からすれば賃貸契約にこれだけの管理業務を行っているとは理解されにくいため、社宅代行会社の導入を検討する際には『自社の対応時間』の算出が重要になります。社宅管理業務は人事発令のシーズンと同時期に発生する業務でもあるため、膨大な社宅管理業務によって他の業務が圧迫されることもよくあることです。自社でしかできない重要な業務とそうでない業務はしっかりと分類して、重要な業務がおろそかにならないように合理化を検討しなければなりません。

✅専門知識の比較

社宅代行会社は社宅取引のプロであり、あらゆるトラブルや処理に精通しています。自社でトラブルが発生した際には自社で処理しなければなりませんが、社宅代行会社が関与したトラブルには圧倒的な経験値で対応することができます。例えば些細な名義変更や敷金回収トラブル、原状回復費用などで社宅代行会社相手に無茶を言う家主はほとんど存在しませんが、自社で社宅業務を行っていれば原状回復費用などであきらかにふっかけられていると思った経験はあるはずです。餅は餅屋、社宅管理は社宅管理業者へ委託するとトラブルも減り、また自社の担当者のレベルが高いほど退職時リスクが高まります。

✅安全な運用/リスク管理

特に原状回復費用の妥当性には多くの担当者が頭を悩ませています。民法改正によってより一層借主負担が厳しくなるとはいえ、請求が激減するとは考えられません。管理会社がそれなりの論拠をもって原状回復費用を請求されれば、支払ってしまうのが普通の会社です。また、敷金の残高が合わずに資産管理部門から指摘されれば膨大な時間をかけて調査しなければなりません。家主が還し忘れていた程度ならまだしも、とぼけたり私的な都合で敷金返還を渋る家主も当然多くいます。これらの折衝業務にいちいち弁護士が付き合ってくれれば気は楽ですが、些細な問題は担当部門が行わなければなりません。社宅管理の基礎知識が無い担当者にまかせっきりにしている会社も多くありますが、発覚しにくい分だけ蓄積されるのが社宅管理のリスクです。不動産トラブルは後になるほど解決が難しく、また費用が掛かることは他のトラブルと同じです。

代行方式と転貸方式

社宅代行会社への委託を検討する際には転貸と代行のサービスによる違いについて比較が発生します。転貸方式は家主と代行会社が直接契約し委託法人へ転貸し、代行形式は家主と委託法人間での契約を社宅代行会社が代理人として手続きを行います。転貸ではリロケーションジャパンが最大手ですが、日本社宅サービスを除き東京建物不動産販売や最古参のタイセイハウジー、東急社宅マネジメントなども代行方式を主としながらも企業からの要望があれば転貸方式のサービスを提供しています。転貸形式は企業と代行会社との契約となり自由度が高いため、原状回復費用の一律サービスや敷金の建て替えサービスなど様々なアイデアと工夫で各社競い合っています。

✅社宅業務外部委託のメリットとデメリット

メリット1.圧倒的な作業時間の削減

社宅代行業務のアウトソーシングによって、社宅業務の9割程度の工程が削減できると言われています。社宅管理業務は入社や人事発令の時期と同タイミングで発生する性質があるため、比較的下位のエントリー業務として扱われている会社も多く、他の業務を圧迫しないよう外部委託を検討することが多いようです。時間外労働の上限規制や有給休暇取得義務化など、働き方改革関連法の施行によって『自社の従業員の労働時間』はますます重要度が高まり、社宅だけでなく業務のアウトソーシングは積極的に活用すべき時期にあります。

メリット2.専門業者委託によるリスクの回避

社宅管理業務といっても実務を行うには最低限の人事労務、税務と不動産の知識が必要になります。これらの知識が不足したまま実務を行っているとミスが気づかないところで累積されていくことになり、後で処理できないような問題に発覚することもあります。専門業者へ管理を任せることで、安全な運営と早期のリスク発見につながります。

メリット3.業務の安定・俗人化の排除

社宅業務を扱っていた専任の担当者が離職したり休業することはよくあることです。ルールに無い属人的な運用方法を行っていると、離職した前任者へ聞くわけにもいかずに引き継いだ担当者に苦労を強いることになります。業務のアウトソーシングは生産性の向上にもつながる現代経営の主流であり、俗人化はリスクを増大、またトラブルの多い社宅業務を専属で担当させることは長時間労働の温床にもなります。時間外労働の上限規制が法制化した今、一時期のことと長時間労働を黙認することはできません。その点、社宅代行会社へ難易度の高い業務を委託しておけば安定した社宅管理業務の水準が維持されるため、担当者の配置や離職に頭を悩ませることもありません。

デメリット1.再内製化の困難

業務をアウトソーシングすると、再度社内で行うことが困難と言われます。一度失った能力を復活させるためには相当な時間と労力、つまり費用が掛かりますので、アウトソーシングを検討する際には必ず懸念事項に上がりますが、人件費が今より安くなることは想定しにくいため、少ない人員のコア業務への集中を考えれば社宅業務アウトソーシングはやむを得ないと考えるのが自然な考え方ともいえます。

デメリット2.委託コスト

業務を外部委託するには当然に委託コストが発生します。10年前の委託費用は相当な価格を提示されましたが、最近は業界的にも価格競争が始まっているため中小企業でも十分にメリットを享受できることがあります。なお、100戸以下の管理戸数は代行会社としてもスケールメリットを見いだせないため依頼や見積も断られることがありましたが、最近は社宅代行会社内でのシステム化が進んだため50戸程度でも引き受けしてくれるところがあります。火災保険無しで一戸当たり月額800円~2000円と、様々な事業者が様々なプランを用意しているため、フルアウトソーシングでなく一部であっても委託することができます。

デメリット3.雇用の維持

自社の業務を外部委託するということは、担当していた人材の業務バランスを変更しなければなりません。社宅業務程度が無くなっても人事部門にはそのほかに大量の業務がありますのでリストラの必要は考えられませんが、コストの問題だけでなく雇用の維持も無視できません。定年退職社員の再雇用で人事部門に配属させることもよくあることですが、業務自体をスリム化しすぎることを懸念する事業主も多いのが実情です。雇用の受け皿として社宅管理業務含めた人事管理はベテランの力を発揮できる部門でもあるため、単純にコストだけを優先してアウトソーシングを進めるとストップがかかることがよくあります。

おわりに

社宅管理業務は100件が外部委託のラインと言われていましたが、最近の人材不足、キャリア社員の離職や採用難から、50件程度でも検討する会社は多くあります。外部委託がポピュラーになった社宅業務の内製にこだわり続けることは担当部門を疲弊させることになるため、生産性を重視される経営においてはいずれ検討をしていくことになる業務ではありますが、担当者の負担だけでなく将来の事業の成長や人材の維持、活用も検討しながら自社で最適な運用方法を決断していかなければなりません。社会の変化は速く、来年の事業状況も読むことが難しい現代ですが、自社の人材をまず考えるのならば社宅業務のアウトソーシングはやむを得ない時期に来ているところも多いはずです。意外にも社宅業務を一度外注した企業は、委託業者を変更することはあっても社内に業務を戻すところはほとんどありません。それだけ、社宅業務は地味ではありますが外部委託の効果が高いと考えている企業が多い一面もあります。

 

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【記事監修】RESUS社会保険労務士事務所/山田雅人(宅地建物取引士・社会保険労務士)
大企業・上場企業を中心に10年にわたり全国500社以上の人事担当と面談、100社以上の社宅制度導入・見直し・廃止に携わった経験を活かし、不動産に特化した社労士として中小企業の働き方改革と福利厚生制度導入を支援しています。

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