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転勤時の支度金は所得税と社会保険料を控除する?

2019/09/10

転勤時の一時金、全額支給して問題ない??

恒常的に転勤の発生する企業において、転勤者に対する費用の補填として「支度金」や「赴任手当」「転勤旅費」「地域(地方)手当」「寒冷地手当」といった名目で一時金や手当を支給しているところは多くあります。

単身赴任など転勤の場合には、電化製品や家具の買い替え、引越し代や移動に要した交通費など、従業員にとって大変負担のかかるものです。それら負担の不満を軽減するための赴任支度金は従業員にとっては有難いものですが、支度金の支給が多いと『転勤リッチ』、支給が少ないと『転勤貧乏』など、転勤時に支給する手当は法律上義務付けられたものではないため、企業によって額はまちまちです。さて所得税、労働保険(雇用保険・労災保険)、社会保険料(健康保険・厚生年金)はどのように扱うのが正解でしょうか。それぞれ扱いが異なりますので注意して処理が必要です。

社会保険料の扱い

健康保険法第3条3・厚生年金保険法第3条1項では、『「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。』とされています。

2003年(平成15年度)より社会保険料は『総報酬制』に変更され、報酬とみなされる全てのものは社会保険料の対象となり、年4回以上毎月支給されるものは定時決定による標準報酬額に基づき社会保険料を徴収、年3回以内に支給されるものは標準賞与額に基づき社会保険料が徴収されます。

労働の対償とは?

①実費弁償的なものでないこと

②恩恵的なものでないこと。(労働協約、就業規則、給与規程、労働契約等によりその支給が事業主に法律上義務付けられている場合及び慣習が慣習法となり又は慣習が労働契約の内容となることによってその支給が事業主に義務付けられているものであること)

とされており、支給の名目ではなく実態として扱われることとされていることから、事業主が通常負担すべきものを労働者が立て替え、その実費弁償を受ける場合は『労働の対償』には該当しないため、転勤支度金で実費弁償の性質が強いものは社会保険料算定の報酬には該当しません。

労働保険料上の扱い

労働保険料(雇用保険料・労災保険料)は対象期間の賃金総額に労働保険料率を乗じることによって算出します。

労働保険料の賃金は、

✅事業主が労働者に支払ったもの

✅労働の対償として支払ったもの

の二点を具備しなければならないとされています。

(雇用保険法第4条4項)賃金とは、賃金、給料、手当その他名称の如何を問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのものをいう。

つまりは、社会保険料と同様で転勤支度金で実費弁償の性質が強いものは労働保険料算定の賃金に含める必要はありません。

但し、一時金と異なり月々支給するものについては扱いが異なります。

転勤が命ぜられ転勤先事業所に住居がないため単身で赴任し一時的に家族と別居する場合に支払われる手当は、賃金と認められる。【賃金月額の算定の基礎となる賃金の範囲(平成24年4月告示)】とされています。

《賃金総額に算入するもの》

基本賃金 日給・月給、臨時・日雇い労働者・パートタイマーに支払う賃金
賞与 夏季・冬季・期末などで支払うボーナス
通勤手当 非課税分を含む
定期券・回数券 通勤のために支払う現物給与
超過勤務手当(残業代)、深夜手当等 通常の勤務時間以外の労働に対して支払う手当
扶養手当(子供手当・家族手当等) 労働者本人以外の者について支払う手当
技能手当(作業手当・役職手当等) 労働者個々の能力や資格に対して支払う手当や作業にかかる手当
調整手当 配置転換、初任給等の調整手当
地域手当 寒冷地手当、地方手当、単身赴任手当等
住居手当 家賃補助のために支払う手当
奨励手当 精勤手当、皆勤手当てなど
生活手当(生活保証金) 家計補助の目的で支払う手当
休業手当 労働基準法26条に基づき、事業主の責に帰すべき事由により支払う手当
宿直・当直・日直手当 医療機関等の変形労働時に支払う手当
社会保険料負担手当 労働者の負担分を事業主が負担する部分
昇給差額手当 離職後支払われた場合で在職中に支払いが確定したものなど
前払い退職金 支給基準、支給額が明確な場合は原則として含むと扱う

《賃金総額に算入しないもの》

役員報酬 取締役等に対して支払う報酬
結婚祝金・死亡弔慰金・災害見舞金・年功慰労金・勤続報奨金・退職金 就業規則・労働協約等の定めを問わない
出張旅費・宿泊費 実費弁償と考えられるもの
工具(用具)手当・寝具手当 労働者が自己の負担で用意した用具に対して支払う場合
休業補償金 労働基準法第76条の規定に基づくもの
法定額60%を上回った差額分を含めて賃金としない
傷病手当金 健康保険法45条に基づくもの
解雇予告手当 労働基準法20条に基づき労働者を解雇する際、解雇日の30日前に予告をしないで支払う手当
財形貯蓄等のため事業主が負担する奨励金など 勤労者財産形成促進法に基づく勤労者の財産形成貯蓄を援助するために事業主が一定の率(額)の奨励金を支払う場合
会社が全額負担する生命保険の掛け金 従業員を被保険者として保険会社と生命保険等厚生保険を契約し、事業主が保険料を全額負担するもの
持ち家奨励金 労働者が持ち家取得のため融資を受けている場合で事業主が一定の率(額)の利子補助を行う場合の手当
住宅の貸与(福利厚生施設) 住宅貸与されない者に対し均衡手当を支給している場合は貸与の利益を賃金と扱うことがある

所得税の扱い

所得税法では、転任に伴う転居のための旅行に充てられる支給で、通常必要と認められるものについては非課税として取り扱うこととされています(所得税法9条1項、基本通達)。実際に本人がいくら使ったのかは問われず、通常必要と認められる範囲であれば経費にすることができることから節税方法としても利用されています。

所得税法基本通達9-3

1.その支給額が、その支給をする使用者当の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。

2.その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

税法の特性とも言えますが、これらは妥当性の基準となるものが無く「適正なバランス」や「相当と認められるもの」がさっぱりわかりませんし、専門家によっても回答に差があります。要は、税務署が黒といえば黒となる部分にもなりますので、あまり派手な支給をせず、また指摘された際に備えて社内でも一定の論理的説明を用意しておくことが必要です。会社の規模や頻度などを考慮し、『指摘されない範囲』を自社で判断するしかありません。税理士を交えて検討しましょう。

まとめ

固定費が連続して支給され、通常の生活費に充てられるようなものは各法上でも源泉徴収が必要ですが、転勤は業務の必要性から従業員に命じるものであるため、一時金が実費弁償の性質と認められる範囲のものであれば税法上も所得課税無し、労働保険、社会保険料の算定から除外して問題ありません。但し、移動距離や家族構成を考慮せず定額で支給している場合や『転勤リッチ』となるような過大な部分については監督庁の調査があった際には含めるよう指導を受ける可能性があります。適正な範囲での運用については専門家の意見を聞きながらの制度設計が必要です。

 

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