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不動産業者必見!駐車場貸付と仲介手数料にかかる消費税の基本と注意点【2025年最新版】

2019/11/13

(最終更新日:2025/08/25)

駐車場と消費税の課税関係は非常に複雑で、税理士や弁護士でさえ慎重な判断を要する分野です。特に不動産業者にとっては、駐車場の仲介手数料や契約にかかる初期費用の取り扱いを誤ると、顧客とのトラブルや税務リスクにつながります。本記事では、2025年8月時点の最新法令に基づき、実務で押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。

 

駐車場の貸付と消費税の基本ルール

土地貸付は非課税、設備付き駐車場は課税

消費税法では、土地の貸付は「非課税取引」とされています。これは土地の利用が価値の減少を伴わないためです。一方、舗装やフェンス、区画整理、建物などの設備を伴う駐車場貸付は「施設の利用」が主目的とみなされ、課税対象となります。

 

課税対象となる代表的な駐車場の例

  • 契約期間が1か月未満
  • アスファルトや砂利で舗装され、区画が明確に表示されている
  • フェンスや車止めが設置されている
  • 管理人や管理看板がある
  • 商業施設・スポーツ施設の付随駐車場

これらに該当する場合、消費税10%が課税されます。

 


非課税扱いになる駐車場契約の具体例

以下のようなケースでは、「住宅の貸付に付随する」として、非課税扱いになります。

  • 住宅の家賃に駐車場代が含まれている
  • 入居者全員が駐車場を使用できる構造で、駐車場使用の有無にかかわらず家賃が一律
  • 駐車場が住戸と同一敷地内にある

ただし、契約書で駐車場使用料が明確に区分されていたり、他者への転貸が可能な場合は、課税扱いとなる可能性もあります。

 

青空駐車場の取扱いに注意

舗装されていない更地で、標識や番号表示のないいわゆる「青空駐車場」は、非課税扱いが原則ですが、以下のような場合は課税扱いに変更されます。

・区画が明示されている(プレートや番号表示)

・看板等で管理体制が明らかにされている

申告の際には、実態に基づく課税区分の判断が必要です。

 

駐車場契約の初期費用と消費税の関係

課税される費用

  • 礼金・仲介手数料・車庫証明発行手数料:すべて課税対象(消費税10%)

課税されない(不課税)の費用

  • 保証金・敷金:返還を前提とするため不課税

なお、駐車場契約に礼金が発生する場合、住居とは異なり課税対象になります(賃料の前払い的性質と解釈されます)。また、礼金の消費税説明がないまま請求するとトラブルになる例もあるため、顧客への丁寧な説明が求められます。

 


インボイス制度と免税事業者との取引

2023年10月に施行された『適格請求書等保存方式(インボイス制度)』により、取引相手が免税事業者である場合、仕入税額控除ができなくなるため、法人取引では「インボイス発行事業者かどうか」が重要になっています。

よくある誤解と正しい理解

  • ❌「免税事業者だから消費税を請求してはいけない」
  • ✅「免税事業者でも、課税取引には消費税を上乗せして請求できる」

現在は、登録状況を国税庁サイトで確認できるため、不動産業者も契約時に相手方のインボイス登録有無をチェックすることが推奨されます。

借地借家法・宅建業法と駐車場仲介の関係

駐車場契約は、借地借家法および宅建業法の適用外です。これは、借地借家法における「借地」が「建物所有目的の土地賃貸借」に限定されているためで、単なる駐車スペースの賃貸は対象外となります。

そのため、駐車場の仲介に関しては、宅建免許や重要事項説明が不要であり、仲介手数料の上限規制も適用されません

とはいえ、実務上は賃料1か月分を基準とすることが一般的であり、あまりに高額な手数料を設定すればトラブルを招く可能性があるため、社会通念上妥当な範囲での運用が求められます

 


実務トラブルの防止と対応のポイント

高齢の駐車場オーナーなど、消費税の仕組みに不慣れな相手方から「消費税は要らない」「非課税で」と言われるケースがあります。

その場合でも、課税取引に該当する以上は消費税を上乗せするのが原則です。将来的な消費税率改正時に増税分を請求できないなどのリスクもあるため、事前に説明したうえで請求書等に明確に消費税を記載することが重要です。

 


まとめ:不動産業者が押さえるべき消費税対応の要点

  • 駐車場貸付の実態に応じて課税・非課税の判断が必要
  • 初期費用の課税区分を正しく理解し、顧客に説明する
  • インボイス制度下では免税事業者との取引リスクを把握
  • 駐車場の仲介は宅建業法の適用外だが、常識的な運用が必要

不動産業界において、消費税への理解は今後ますます重要になります。社内研修やマニュアル整備を通じて、従業員全体の税務リテラシー向上を図ることが、信頼される業者への第一歩です。

 

【記事監修】RESUS社会保険労務士事務所/山田雅人(宅地建物取引士・社会保険労務士)
大企業・上場企業を中心に10年にわたり全国500社以上の人事担当と面談、100社以上の社宅制度導入・見直し・廃止に携わった経験を活かし、不動産仲介業者に向けた事務代行サービス、不動産業専門に特化した社労士として人材不足の解消や働き方改革を支援しています。

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